例えば、A証券の子会社であるA投信投資顧問が投資信託を運用しており、A投信投資顧問は、運用上たまたまA証券の株式をポートフォリオに組み込んでいたとします。この時に、A証券の決算発表し、その内容が大赤字であり、翌日からは、株価が大幅に下落するとみられる場合を考えてみます。
A証券からはグループの保護のために、A投信投資顧問に対して、保有している株式の売却を止めるように要請が来たとします。
A投信投資顧問は、この要求に対して、応じるべきでしょうか?
この要求に応じてしまえば、評価額が下落し続けるA証券の株式をずっと保有したままになり、結局は投資信託を購入したお客さんに損害が発生します。一方で、この要求を拒否した場合には、A証券グループの時価総額は大きく下落してしまいます。
こうした場合でも、運用者の義務として、「顧客から預かっている資産を出来る限り守る」必要があります。従って、上記のように株式を保有し続けるように依頼があったとしても、それに応じるべきではなく、顧客資産の保護のために必要であれば、売却しなければなりません。
21世紀に入ってからの日本では、コンプライアンス意識の高まりを受けて、こうした受託者の忠実義務の遂行が強く意識されつつあります。
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