厚生年金基金は、従業員がはたらいている間に、企業が掛け金を拠出して積み立て、それを運用することで、積立金と運用益とを合わせて、通常60歳以降の老後の年金を給付していく仕組みです。
従業員が会社に入ってから、60歳で年金を受け取り始めるまでには、非常に長い期間があります。このため、年金資産の運用も自然と長期間にわたって行われ、年金給付の原資としては運用益が大きなウエイトを占めることになります。
原資に占める積立金と運用益の比率は、多い場合で約7割を占めるケースもあり、年金給付においては、年金資産の運用が非常に重要なポイントとなります。
従来、年金基金制度の下では、基金資産の運用にあたって、元本保証のものを5割以上、リスクのあるものについては、株式が3割以下、外貨建て資産が3割以下、不動産は2割以下にしなければならないという、いわゆる「5,3,3,2」規制が行われてきました。
この規制は年金資産の安全性を確保するためのものでしたが、この厳しい運用ポートフォリオの制限によって、年金資産運用は安全性が担保される一方で、より高いパフォーマンス=運用成績をあげる可能性を摘み取ってしまう結果となりました。
この規制があるために、ポートフォリオを構成する自由度が下げられてしまい、誰が運用しても大差がないということになりました。
つまり、資産運用を一生懸命にやる必要も無いし、やりたくても制限があって出来なかったという状況でした。
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【目次】
1.確定拠出年金=401kの仕組み
日本の年金制度の現状
今後の公的年金制度
確定拠出年金(401k)登場の背景
確定拠出年金(401k)の区分
企業型の確定拠出年金(401k)
個人型の確定拠出年金(401k)1
個人型の確定拠出年金(401k)2
確定拠出年金(401k)掛け金の取扱い
確定拠出年金(401k)の給付
確定拠出年金(401k)の受け取り方
確定拠出年金(401k)の運用
確定拠出年金(401k)掛け金の税制
確定拠出年金(401k)給付の税制
加入資格喪失と途中解約
運営管理機関等が破綻した場合
預金保険制度
2.米国の状況と受託者責任
米国の確定拠出年金(401k)制度
米国確定拠出年金(401k)制度の概要1
米国確定拠出年金(401k)制度の概要2
■年金運用の受託者責任の重要性
年金の受託者責任ガイドライン
受託者責任ガイドラインの応用
米国の受託者責任〜プルーデントマン・ルール
3.年金資産運用、ポートフォリオ戦略
確定拠出年金(401k)の資産配分
401k年金の資産配分の実例
ライフサイクルから見た年金運用
1.積立局面
2.統合局面
3.消費・退職局面
確定給付型アセット・アロケーション
年金運用でのリスクとリターン
リスクの種類
年金会計の用語解説
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1990年代に年金資産の運用が低迷する中で、運用の機会を狭めるはたらきをしていた、この「5,3,3,2」規制は1998年に撤廃されました。これによって、年金資産の実質的な自家運用が認められ、それを行う基金も増加してきました。
こうして基金が自由なポートフォリオを組んで運用することが出来るようになったことを受けて、それに見合った運用責任を明確化するために、「受託者責任ガイドライン」が設定されました。
ガイドラインでの基本的な考え方は、投資先進国であるアメリカの受託者責任の考え方・法律を大きく取り入れて反映したものとなっています。
> 年金の受託者責任ガイドライン
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